『イノベーションのジレンマ』を小説のように読む

ビジネス書を1冊だけ勧めろと言われたら、私は迷わずクリステンセン『イノベーションのジレンマ』を選ぶだろう。

アナログvsデジタルの話でも「大企業の人間はバカだから、よくわかってないだろうけど、これからはネットの時代だよwww」みたいな論調はよくあるわけだが、そうではないんだという話。

大企業の人間も馬鹿ではない。トレンドは分かっている。でも、既存顧客・関係者のためには出来ないんだ。という分析を行なっている。

例えば、新聞はどうだろう。ネットの方が情報が新しい、流通コストもかからない。良いことづくめだ。しかし、既存の新聞社は踏み込めない。

まず、市場規模の問題がある。「新設されたベンチャー企業が売上10億円を確保しよう。」という話と「売上1000億円の企業が、来期目標は20%増しの1200億円です。」という話では、規模が違いすぎる。そのうち新しい技術が市場を寡占することになるのだろうが、それが”いつ”なのかが問題なのだ。

次の問題点は、既存関係者との人情論というべき問題だろう。「あ、うち明日からネット配信にするんで、新聞配達なしね。」と、販売店に言える人は少ないだろう。(もし、オレは平然と言えるぜという人がいたら、自分の人間性を反省した方が良いだろう。)

「大企業の人間はバカだから、よくわかってないだろうけど、これからはネットの時代だよwww」みたいな外部からの視点と異なり、内部の人間は「よっしゃ、これは負け戦だと分かっていても、漢として戦わないといけないことがあるんだ。さあ、行こうぜ!」みたいなノリがあるわけです。

そういう観点で『イノベーションのジレンマ』を読むと、なんだか漢っぽい小説を読んでいるような気分になるのです。

P.S.
一応言っておくと、並のビジネス書は精神論で書かれていますが、『イノベーションのジレンマ』は学術研究的な分析が優れているところが、最大の売りです。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
クレイトン・クリステンセン
翔泳社
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